STEP-3 制限するのは糖質から? 脂質から?
今回からはSTEP-3を学んでいこう。
STEP-3ではどのようなことを学ぶのでしょうか?
STEP-3では糖質・炭水化物の摂取について学んでいこう。
遂に炭水化物ですか!
STEP-2で脂質の摂取目安を守って
STEP-3で糖や炭水化物ということは、炭水化物よりも脂質制限の方が優先度が高いという事ですか?
その通り。
STEP-2の脂質制限の方が優先度が高い。
STEP-2で脂質の摂取目安20g~40gを守れて、更に除脂肪をブーストさせたいという人は今回のSTEP-3に進んでみて欲しい。
脂質と言うのは「肉体を構成したり、ホルモンの材料になったり」とても大切な栄養素なんだけど「炭水化物に比べて見えない栄養素」だから摂取過多になりやすいのは前回でわかっただろう?
確かにSTEP-2では食材の脂質量とか調理油についてとか今まで全く気にもしなかったことばかりだったよ!
下手したら僕は今まで一日1000kcal近くは脂質から摂取していたかも。
調理油を例にとっても脂質に関しては自分が一日にどれぐらい摂取しているのか全く認識していない人がほとんどだ。
そして自分の一日の代謝量を大幅に超えるカロリーを摂取していなければ、M彦君やN美君のように「体脂肪率30%を超えることはまずできない」
その大幅なカロリーオーバーの原因こそが「HFCC」
つまり炭水化物を含む「高脂肪食」という事なのさ。
太る食事の定義、炭水化物を含む高脂肪食、HFCC。
確かにカロリー制限や糖質制限は一般的ですけど、脂質摂取量に関してはそこまで気にしてなかったです・・・。
そして脂質は炭水化物の倍以上のエネルギーを持ち「直接体脂肪化する高エネルギー体」ですからね。
摂取過多になれば当然体脂肪は落ちない。
炭水化物を制限することで血糖値を上げず、インスリンレベルを抑えて体重が増えないように働きかけるロカボやアトキンス式などがある。
糖質を制限することでグリコーゲンの減少に伴って体水分が落ち、短期的にすぐに体重が落ちる。
しかしいくら炭水化物を制限しても「高エネルギー」「直接体脂肪化する」という脂質の持つ要素をコントロールしない限り、カロリー収支はなかなか改善されず、思うように体脂肪を削ぎ落す肉体彫刻も難しい。
HFCCの制限、つまりは「高脂肪を制限する」ことが肉体彫刻の第一歩だ。
太る食事、HFCCの定義でもある「高脂肪」を除外する。
だから糖質制限より脂質制限の方が優先度が高いということですね!
その通り。
STEP-2でそれができた上で、初めてSTEP-3で糖や炭水化物に対して目線を向けるんだ。
君らほどの体脂肪率であれば、STEP-2をこなすだけで面白いように体脂肪は落ちていく。
STEP-3は更に除脂肪をブーストしたいのであれば進めばいいんだ。
STEP-3 糖質や炭水化物は「タンクの量を意識」するべし! ~切らしちゃいけない炭水化物!~
炭水化物よりも脂質制限の方が優先度が高いことが確認できたら、さっそく糖質と炭水化物について学んでいきましょう♪
宜しくお願いします!
宜しくお願いします!
STEP-3では「炭水化物はしっかりと摂取するもの」ということをまず先に理解して欲しい。
「制限するのではなく、しっかりと摂取する」んですか?
その通り。
まず体脂肪を効率的に消費するためには基本的にグルカゴンの分泌が重要だということ。
そしてグルカゴンは血糖値が下がってきた際に、「肝臓のグリコーゲンを利用して血糖を維持する」という作用がある。
更に「タンパク質を摂取した際のアミノ酸を代謝」をするためにも分泌される。
グルカゴンは体脂肪を分解してエネルギーにするために血液中に放出するHSL(ホルモン感受性リパーゼ)の活性を上げるんでしたね!
体脂肪をエネルギー利用するためには欠かせないホルモンですよね!
その通り。
だから毎食タンパク質を摂取してグルカゴンの分泌を促し
更に炭水化物もしっかりと摂取して肝臓のグリコーゲンタンクを満たしてあげる必要があるわけだ。
タンパク質と炭水化物、つまりはPCミールですね!
そして脂質は一日の摂取量が20g~40gになるように摂取量を制限すると!
その通り。
ではもし極端な糖質制限をして肝臓のグリコーゲンが無くなってしまった場合はどうなるか?
確かに・・・
言われてみれば・・・
肝グリコーゲンは「備蓄された糖質エネルギー」
そして「脳は糖質をエネルギーとしている」
つまり肝グリコーゲンの枯渇というのは「脳のエネルギーが足りなくなると肉体は判断し、肝グリコーゲン以外から糖を作り出す必要がある」と考えるわけだ
結果、コルチゾルなどの「糖質コルチコイド」の活性が上がり「筋肉からアミノ酸を取り出して糖を作り出す糖新生の作用が強まる」わけだ。
つまり筋肉を分解してアミノ酸から糖を作り出すんですか?
アミノ酸って蓄積できない大事な栄養素のはずでは?
あと確かグリコーゲンって「筋肉にも蓄積されている」んですよね?
肝臓のグリコーゲンが無くなったら、筋肉からアミノ酸を取り出すんじゃなくて、筋肉のグリコーゲンを血糖値を維持するのに利用すればいいじゃないですか!?
残念だったね。
蓄えたグリコーゲンを血糖値に、つまりグルコースに変換するためにはグルコース6-ホスファターゼという「酵素」が必要なんだけど、その酵素は肝臓と腎臓のみに存在していて筋肉にはそれが存在しない。
つまり残念ながら筋肉のグリコーゲンは筋肉を動かすために利用されるだけで、血糖値の維持には利用されないという事さ。
(レジスタンストレーニングをして乳酸に変換されれば、それはコリ回路を通して血糖値の維持に使えるんだけどね・・・)
じゃ、じゃあ基本的には血糖値を維持するのに利用できるのは「肝臓のグリコーゲンだけ」ってことですか!?
そういうことだ。
えっと・・・グルカゴンは筋肉の分解も促進するってこと?
もう忘れたのか?
グルカゴンの異化作用は筋肉には働かない。
なぜなら筋肉にはグルカゴンを受け止めるレセプター(受容体)がそもそも無いからね。
同化と異化 肉体彫刻ホルモンの作用 | |||
臓器 | 作用 | インスリン(同化) | グルカゴン(異化) |
脂肪組織 | 脂肪合成 | UP | |
脂肪分解 | DOWN | UP | |
骨格筋 | 糖の取り込み | UP | |
グリコーゲン合成 | UP | ||
アミノ酸取り込み | UP | ||
タンパク合成 | UP | ||
肝臓 | 糖の取り込み | UP | |
糖産生 | DOWN | UP | |
グリコーゲン合成 | UP | ||
グリコーゲン分解 | DOWN | UP | |
アミノ酸取り込み | UP | ||
タンパク合成 | UP | ||
アミノ酸代謝・尿素産生 | UP | ||
脂肪合成 | UP | ||
脂肪分解 | UP | ||
ケトン体合成 | UP | ||
すい臓 | ホルモン分泌 | グルカゴン分泌抑制 | インスリン分泌促進 |
消化管 | 蠕動運動 | 抑制 | |
腎臓 | ナトリウム、水再吸収 | UP | UP |
褐色脂肪組織 | 熱産生 | UP | |
中枢神経 | 食欲 | DOWN | DOWN |
グルカゴンの異化作用は「肝グリコーゲンの利用」と「脂肪分解」に働くけど筋肉には影響していない!
つまり肝臓のグリコーゲンが無くなった時点で、別の血糖値を上げるホルモンの活性が上がり、筋肉から糖を作り出す作用が強まるという事ですか?
そういうことだ。
グルカゴンは糖原生アミノ酸、つまりタンパク質からも糖を作り出す作用を肝臓で強めるが、その材料となるアミノ酸自体を体内から用意することができない。
血糖値に作り替えることのできる糖原生アミノ酸は糖質コルチコイドなどの別のホルモンによって「筋肉という人体最大のアミノ酸のプール」から取り出されるされるわけだ。
それってダメじゃないですか・・・
僕らが落としたいのは「体脂肪」であって筋肉ではないですよ!
だから肝臓のグリコーゲンのタンクを常に切らさないように
「炭水化物はしっかりと摂取しよう」ということだ。
そうか!
そもそも肝臓のグリコーゲンタンクが枯渇しなければ、グルカゴンの働きで血糖値は維持できる!
肝臓のグリコーゲンで血糖値が維持できていれば、わざわざ大事な筋肉からアミノ酸を取り出して、糖に変換する必要が無くなるという事ですね!
その通り。
我々肉体彫刻家にとって練磨し築き上げた筋肉をエネルギーに利用することは極力避けたい。
グルカゴンというのは肉体のエネルギーバランスを保つバランサーだ。
肝臓のグリコーゲンがあればそれを利用して血糖値を維持し、食事で摂取したタンパク質、つまりアミノ酸を糖に代謝する働きも持つ。
更にいつか詳しく説明するが「脂質をケトン体」という脳で利用可能なエネルギーに変換する働きも肝臓で促進させる。
グルカゴンは何が何でも「脳や肉体のエネルギーを維持するマン」ですね。
良い例えだね。
つまり毎食タンパク質と十分な炭水化物を摂取し、肝臓のグリコーゲンタンクを切らさないことによって、グルカゴンの働きにより筋肉を維持しながらも血糖値維持&除脂肪をすることができるというわけだ。
脂質と違って、糖が体脂肪化するためにはいくつものSTEPが必要。
つまり糖は体脂肪化しにくいけど身体、特に脳にとっては重要なエネルギー。
だから炭水化物は制限するのではなく、筋肉を守るためにも肝臓のグリコーゲンタンクを切らさないように「しっかりと摂取する」ことが大事なんですね。
理解してくれて何よりだよ。
では次回は具体的な炭水化物の摂取について話をしていこう。