彫刻ホルモン その名はグルカゴン
同化反応は体組成が増える「貯金」
異化反応は体組成が減り「貯金を切り崩す」
そして同化のトリガーホルモンがインスリン。
肉体を増強するホルモンね。
そして「異化反応のトリガー」
つまり「痩せるスイッチ」は何か存在するのですか!?
インスリンは身体のどこから分泌されるか覚えているかい?
えーっと・・・
確かすい臓の・・・
すい臓内に分布している「ランゲルハンス島のβ細胞」です!
N美さん、その通りよ♪
すごいや・・・N美さん
同化のトリガーホルモン、インスリンは「β細胞」から分泌される。
そして「異化のトリガーホルモン」は同じランゲルハンス島のβ細胞と隣接している「α細胞」から分泌される。
なっ、なんと!
ベータ細胞ではなくアルファ細胞から!
そのα細胞から分泌されるホルモンの名を「グルカゴン」という。
グルカゴン!
私聞いたことがあります!
確か「血糖値を上げるホルモン」なんですよね!?
「血糖値を下げるインスリン」とは対照。
「拮抗するホルモン」だって昔習った記憶があります!
インスリンが血糖値を下げ
グルカゴンが血糖値を上げる
つまり「両者は拮抗するホルモンである」
一般的にはそういう認識をされるホルモンだね。
え・・・違うのですか?
インスリンの時と同じさ。
一般的な切り取った認識ではダメだ。
肉体彫刻家として「グルカゴン」をしっかりと理解するべきなんだよ。
確かにインスリンの時も「ただ血糖値を下げるホルモン」と思っていたけど、実際には違った・・・
グルカゴンはインスリンと同じく、エネルギー循環のバランサーにして、究極の彫刻ホルモン。
「ただ単に血糖値を上げるホルモンではない」
す、すいません・・・
究極の彫刻ホルモン!?
N美君はグルカゴンを「血糖値を上げるホルモン」と言った。
グルカゴンの持つ作用の1つとして、それは間違ってはいない。
ただし、その認識だけだとグルカゴンというホルモンを正しく理解することはできない。
「血糖値を上げる作用」を持つってことは・・・
「血糖値が下がった時に分泌されるホルモン」なのですか?
その通り。
グルカゴンは血糖値が下がった際に分泌される「側面」も持つ。
つまり空腹時などの血糖低下時に分泌される!?
そうだね。
空腹時低血糖などの際にはグルカゴン分泌が亢進(増大)される。
そして分泌されたグルカゴンは「体内で異化作用を亢進」させる。
それはつまり
「身体が必要とする糖や脂質などのエネルギー源を体内で生み出す」
ということだ。
「必要なエネルギー源を体内で生み出す」
つまり体組成が減り、痩せるという事ですよね!?
その通り。
すごいや!
正に「痩せるホルモン」じゃないですか!?
グルカゴンの持つ異化作用は主に以下の通りだ。
①脂肪分解亢進(中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解)
②肝グリコーゲンをグルコースに分解(血糖値上昇)
③脂肪酸からケトン体の生成
④糖新生(肝臓でグリセロールやアミノ酸から糖を生み出す)
⑤肝臓でのタンパク質分解を促進
脂肪分解!
脂肪分解!
脂肪細胞内の中性脂肪をエネルギー源として利用するためには「HSL」と呼ばれる「ホルモン感受性リパーゼ」が必要となる。
リパーゼというのは「脂肪加水分解酵素」のこと。
HSLはホルモン刺激によって活性変動する「脂肪分解酵素」ということだ。
グルカゴンを始め「血糖上昇作用を持つホルモン」はそのHSLの体内活性を上げることで、中性脂肪をグリセロールと脂肪酸に分けて血液中に放出する。
そして放出された脂肪酸、およびグリセロールは体内でエネルギー源として消費されるというわけだ。
「体内からエネルギーを生み出す状態」
つまり「異化状態」ということだ。
なるほど!
体脂肪をエネルギー源として利用するためには、まず血液中に分解して流す必要がある!
体脂肪を分解するにはHSLという脂肪分解酵素が必要で、グルカゴンはそのHSLの活性を上げる!
体脂肪は「中性脂肪」という状態で蓄えられている。
そして中性脂肪は「グリセロール+脂肪酸」から構成される。
グリセロールは血液中のグルコースを脂肪細胞が取り込んだもの。
つまりグリセロールは元々はグルコース(ブドウ糖)
HSLによって体脂肪から分解されたグリセロールは
「肝臓でグルコースとして糖に変わり、血糖値を上げるんだ」
筋肉や肝臓でグリコーゲンとして蓄えられなかった場合に脂肪細胞が取り込んだグルコースだね!
つまりグリセロールは「財布から溢れ出して銀行口座に入った糖」ということだね!
そしてグリセロールと結合していた「脂肪酸」は血液中にあるアルブミンというたんぱく質と結合して「遊離脂肪酸」となって心臓や筋肉でエネルギーとして消費されるわ☆
一部は肝臓で再度中性脂肪に合成されたり「第三のエネルギー源、ケトン体」の生成にも利用されるのよ。
ケトン体は脳や様々な臓器にエネルギーとして供給されるのよ。
やっぱり体脂肪はエネルギー源として優秀なのよね♪
ケトン体って確かケトジェニックダイエットで・・・・
ケトジェニックについては、また別の機会に話をしよう。
「脂肪細胞の縮小」つまり体脂肪減をコントロールしているHSLの活性を上げるホルモンがグルカゴンを始めとした血糖上昇ホルモンなんだ。
つまりは血糖値が下がった場合は、グルカゴン分泌により痩せる!?
ロカボとも言われるローカーボダイエット(低炭水化物ダイエット)。
肉体彫刻倶楽部では「LCD」という。
LCDは炭水化物や糖質の摂取量を制限することで血糖値の上昇を防ぐ。
それはインスリンスパイクによる体脂肪合成(同化)を抑え、一日を通してグルカゴンなどの血糖上昇ホルモンの分泌を優位にすることで、異化状態を維持する彫刻方法なんだ。
炭水化物や糖質の量を制限して血糖値の上昇を抑制して、グルカゴンの分泌優位に。
体脂肪やグリコーゲンなどから血糖を生み出して維持する。
それで体脂肪減少を促進するんですね!
LCDに関しては別の機会に詳しく解説をするわよ☆
異化作用により「糖を体内で産生して血糖値を維持する」
グルカゴン分泌優位で痩せるというのは間違ってはいないわ。
アーシャさん・・・なんか含みのある言い方ですね。
もう先生の言っていたことを忘れたのか?
グルカゴンの役割は「血糖値の維持」だけじゃないぞ?
あっ・・・そうか・・・
血糖値を上げるホルモン
その認識だけではダメなんですね?
血糖値を上昇させるというのは
①肝グリコーゲンからグルコースを産生(財布からお金を引き出す)
②中性脂肪分解(銀行口座からお金を引き出す)
つまりは貯金を切り崩すこと。
これはグルカゴンに限らず「他の血糖上昇作用を持つホルモン」にもに言えること。
他にも血糖値を上げるホルモン・・・・
つまり「痩せるホルモン」があるんですか!?
そうだね、グルカゴンに並ぶ血糖上昇ホルモンとしては、腎臓にくっついている副腎。
その内部、副腎髄質と呼ばれるところから分泌される
・アドレナリン
・ノルアドレナリン
というホルモンは聞いたことがあるだろう?
アドレナリンは聞いたことがあります!
確か興奮した際などに分泌されるとかなんとか・・・
アドレナリン、ノルアドレナリン、これらは「カテコールアミン」と呼ばれるホルモン群だ。
カテコールアミンも血糖値が下がることで分泌亢進され、グルカゴン同様にHSLの活性を上げる。
他にも男性ホルモン、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、コルチゾールなど血糖値を上昇させるホルモンは多数存在する。
グルカゴンといい・・なぜ血糖値が下がることで分泌されるホルモンがこんなにも多いんですか?
脳や筋肉を含め「糖は我々の生命活動には欠かせないエネルギー源だ」
急激な血糖値の低下は、昏睡、そして死に至るからね。
身体はそれをどうにか防ぐ必要がある。
例え食餌ができない空腹時であっても、身体は血糖値を維持するために様々なホルモンを分泌するんだ。
死に至る・・・
生物としての「生命活動に血糖値は直結」しているんですね・・・
その通り。
「血糖値を維持するということは生命活動を維持するということ」
飢餓状態だからといって低血糖で活動が出来なくなっては餌をとることが出来ない。
それは生物として死に至るという事。
生物は「空腹時にこそ活動できなければ」生きてはいけない。
なので我々の身体はたとえ空腹時であっても活動できるように、常に栄養を蓄えて「再利用できるようにしている」わけだ。
それが異化「蓄えたエネルギーの放出」だ。
蓄えたエネルギーの放出・・・
それが異化・・・「痩せる」ということ。
先生!
「血糖値」が「異化と同化のホルモン分泌の基準」になっているような気がするんですが!?
すごいな、N美さん!
【血糖値正常 → 血糖値が上昇】
インスリン分泌亢進(同化亢進)
・肉体増強効果
→体組成増
【血糖値正常 → 血糖値が低下】
グルカゴン分泌亢進(異化亢進)
・エネルギー産生効果
→体組成減
身体が空腹なのか、そうでないのか、「血糖値」によって判断されて、それぞれのホルモンが分泌優位になっているということですね!
素晴らしい。
血糖値は肉体の同化優位、異化優位を決定付ける重要な基準となっている。
大したものだ。
やはり炭水化物や糖を制限して血糖値をコントロールするLCD(低炭水化物)はダイエットに有効という事ですね!
ダイエット中は同化優位にならないように留意する。
血糖値のコントロールこそが重要!
そう考えると炭水化物や糖というのは「同化を促進させる」ということで太っちゃうのか・・・
ふふっ。
先生?
・・・どうかされましたか?
「同化と異化の入り口」に君らが到達してくれて嬉しいのさ。
え・・・入口?
これで入口・・・ですか!?
君らは同化と異化の基本を理解した。
同化優位、異化優位、それを「血糖値」という基準で身体が判断してホルモン分泌していることも理解した。
君らは理解してしまった以上「炭水化物や糖に対しての捉え方」が以前は少しは変わったと思う。
二人に質問だ。
結局のところ、「炭水化物や糖質は太るのかい?」
「なぜ糖や炭水化物を摂りすぎると太るのか」
それは「糖や炭水化物が太りやすいのではない」
血糖値の上昇に伴って追加分泌される同化ホルモンのインスリンが
「異化を抑制して同化を促進させるから」
それはすなわち「貯金ばっかりしている」ということ。
更に脂質と違って糖はまずグリコーゲンとして貯蔵され
体脂肪になるまでにはいくつものプロセスを必要とする。
つまり糖は「体脂肪になりにくいエネルギー」ということ。
重要なのは血糖値上昇に伴い追加分泌されるインスリンで
「同化される血液中を流れる栄養素」
「直接体脂肪となる脂質」と「インスリン分泌を促す糖」の「同時大量摂取は肥満に直結する」
すなわち「PFCの組み合わせこそが重要」
糖もエネルギー、脂質もエネルギー。
使い切れないエネルギーは体脂肪として同化される。
素晴らしい。合格だ。
やるねぇ♪
よくやったわ、二人とも♪
糖質と脂質の同時大量摂取にならないように、毎食PFCの組み合わせに注意して食事後のインスリンの追加分泌を抑えつつ、しっかりと食間を空ける。
これでグルカゴンの分泌も促進される。
「一日三食、バランス良く食べましょう」
ということですね!
バランスの良い食事・・・
ようやく始められるな。
へ?
君らはまだ同化と異化の入り口を理解しただけだ。
だがこれだけの知識では理想の肉体は手に入れられない。
我々は肉体彫刻家、さらに先の理解をしていく必要がある。
はい・・・
は・・・はい。
ふふっ。
では二人に質問だ。
【糖負荷試験】というものが実際にある。
これは「糖尿病の判断をする際に行う試験」なのだが
「空腹時に75gのブドウ糖を溶かした水を飲んでもらって」
その後に血糖値やインスリンの分泌量を測定するというものだ。
健常者が糖負荷試験を行った際、体内の状況はどうなる?
ブドウ糖ということは・・・グルコースそのものですよね?
単純に血糖値が上がります。
そして上昇した血糖値に応じて、同化ホルモンであるインスリンが追加分泌されます!
グルカゴンの分泌はどうかな?
血糖値は下がっていません、むしろグルコースそのものを摂取しているので血糖値は上がります!
つまりインスリンの分泌が亢進されて、血糖値上昇作用を持つグルカゴンの分泌は抑制されると思います!
そうそう。
栄養素を同化して取り込む(下げる)必要があるので
・同化ホルモンインスリンは「分泌増」
・異化ホルモングルカゴンは「分泌抑制」
になりますね!
なるほど、ちゃんと理解しているね。
では「ブドウ糖」ではなく「卵かけご飯」を食べた場合はどうかな?
・・・え?
・・・へ?
私は「卵かけご飯」が大好きでね。
どうかな?
そんなの・・・変わらないですよ・・・
「卵かけご飯」といっても「白米」ですから食後に血糖値は上がります。
「食事をして血糖値が上がる」ことには変わらないですよ、先生!
「インスリンは追加分泌されて、グルカゴンの分泌は抑制されます」
そうなるよなぁ・・
残念だったね。
「インスリンの分泌と併せて、グルカゴンの分泌も上がる」
これが正解だ。
ばっ、馬鹿な!?
そっ、そんなはずは!?
我々は肉体彫刻家。
体脂肪を削り、筋肉を発達させ、肉体を美術品として造形する。
さぁ、進めていこう。
肉体彫刻家としての第一歩を。