EP-09 同化と異化①  ~血糖値が上がるとそもそもなぜダメなの?~

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目次

インスリンって何さ?

ダビデ

では今回から肉体彫刻の奥義にして、全ての彫刻手法の土台。

「同化と異化」について学んでいこう。

N美

宜しくお願いします!

M彦

宜しくお願いします!

ダビデ

早速だが二人は「インスリン」というホルモンを知っているかな?

M彦

聞いたことがあります!

確か「糖尿病に関係するホルモン」ですよね!?

ダビデ

・・・・なるほど。


ではその「インスリンの作用」については知っているかな?

N美

私知ってます!

確か「血糖値を下げるホルモン」ですよね!

糖質や炭水化物をたくさん食べると、血液中の糖、つまり血糖値が上がります。

「その上がった血糖値を下げるために」インスリンは分泌されるんです!

ダビデ

・・・・なるほど。

どうやら「一般的な知識」はあるようだね。

N美

へ?

M彦

へ?

ダビデ

「血糖値を下げるホルモン」というだけの認識ではまったく足りない。


インスリンの理解を深めることは肉体彫刻において非常に重要だ。


解剖生理学を学ぶ必要は無いが、肉体彫刻におけるインスリンの役割についてもう少し深く理解してみよう。

ダビデ

N美君はインスリンの作用を「血糖値を下げるホルモン」と言ったね。

ではそもそも「血糖値」とは何だい?

N美

「血液の中の糖の量」です!

ダビデ

いいね、その通りだよ。

また改めて「三大栄養素」の回で詳しく説明するが、糖質にも多くの種類があって、血液中には「グルコース」と呼ばれる種類の糖質が溶け込んでいる。

このグルコースの事を「ブドウ糖」とも呼ぶ。

M彦

ブドウ糖は聞いたことがあります!

ダビデ

ではなぜ「血糖値を下げる必要」があるのかな?

N美

え・・・・?

ダビデ

うん?

そもそも血糖値が上がるとなぜダメなんだい?

「わざわざ下げる必要」はあるんだろうか?

N美

それはですね・・・

ダビデ

自分たちの手を見てごらん。

N美

はっ、はい・・・

ダビデ

色々な場所に触れてごらん、鉄のように冷たいかい?

M彦

普通に暖かいです!

ダビデ

君らが見ている自分の肉体、それは30兆とも60兆個とも言われる細胞の集合体だ。

N美

30~60兆個!?

ダビデ

我々生物は細胞の集合体だ。

小さな細胞が集まり、結合し「我々を形作っている」

N美

普段見ている自分の身体は
目に見えない程小さな細胞の集合体・・・

ダビデ

そしてグルコース(糖)は脂質と同じく、我々の身体を構成している「細胞に必要なエネルギー」となる。

であれば「たくさん血液中に溶け込んでいた方が良い」とは思わないかい?

M彦

そう言われればそうですよね・・・

たくさんエネルギーで満たしてあげたほうが・・・

ロミペン

本当にそうかな?

M彦

へ?

ダビデ

高血糖状態の何が問題なのか。


それは「糖はタンパク質と結合」するということにある。


そして我々の肉体、つまり細胞はその大部分がタンパク質で構成されている。

N美

タンパク質と糖がくっつく・・・

何かいけないのですか?

ダビデ

「身体のコゲ」ともいわれるAGEs(エイジス)と呼ばれる物質を聞いたことは無いかい?

「糖化最終産物」ともいう。

ひらたくいうと「毒性の強い老化物質」ともいえる。

N美

ど、毒性が強い・・・老化物質!?

M彦

老化!?

そのAGEsで老けちゃうんですか?

ダビデ

AGEsはそれ自体が「がんや老化、疾病の原因」となるフリーラジカルを発生させ、様々な疾病の進行に深く関わっている。


そして高血糖状態においてはAGEsが顕著に増大、蓄積することが数多くの研究で示唆されているんだ。


①皮膚の老化・しわ(コラーゲンたんぱくを糖化修飾)
②血管炎症、壊死(ROSによる血管内壁攻撃)
③骨粗しょう症
④アルツハイマー病
⑤動脈硬化
⑥白内障
⑦糖尿病合併症
⑧がん


上記はAGEsの及ぼす悪影響だが、挙げればキリがない。

M彦

はわわわ・・・・

N美

そ、そんな・・・・

ダビデ

我々生物は細胞の集合体、その細胞の1つ1つは酸素や、エネルギーを必要とする。


では「酸素や栄養素を細胞の隅々にまで届けているもの」は何だかわかるかい?

M彦

酸素、栄養素を身体中隅々にまで運ぶ・・・血液? 

「血管」ですか?

ダビデ

その通り。

血液に溶け込んだ酸素や栄養素を細胞に届けているのは「血管」だ。

心臓の拍動と合わせて、血管は収縮し拡張する。

それは全身に血液を送り届ける上で非常に重要な生理機能だ。

N美

あ・・・・

ダビデ

糖はタンパク質とくっつき身体のコゲとも言われるAGE(最終糖化産物)の形成が進む。


そして高血糖状態においては糖質を輸送するトラック(GLUT1)の発現によって、血管内皮への糖の取り込みが促進される。


そのAGEsにより細胞内での代謝障害が起こり、血管内皮機能が低下し、血管は次第にその柔軟性を失う。


「動脈硬化」という言葉、聞いたことが無いかな?

N美

聞いたことがあります・・・・・

血管が固くなるということですよね?

ダビデ

動脈は心臓が血液を送り出す道で心臓が収縮した際に、圧力が一番かかる。

だから血管そのものが拡張して圧力を逃がし、そして縮む。

つまり心臓と共にポンプの役割を果たし、体中に血液を巡らせているわけだ。


それが硬化して、拡張しなくなったらどうなる?

M彦

拡張して心臓の送り出す血液の圧力を逃がせない・・

つまり・・・血圧が上がる?

ダビデ

そうだね、硬化して圧力を逃がせなくなるのだから血圧は上がる。

それだけだと思うかい?

N美

動脈って・・・確か太い血管ですよね?

AGEsが血管にもダメージを与えるのであれば、「細い血管」の方がより先にダメージを受けるような気がするんですが・・・・

ダビデ

正解だ。

動脈のような太い血管とは別に、毛細血管などの極細の血管を
「細小血管」という。

高血糖状態が長く続くことにより、まずやられるのがN美君の言う通り細小血管だ。

N美

やっぱり・・・

ダビデ

俗にいう「しめじ」というやつだね。

し → 神経
め → 目
じ → 腎臓

そして更に血管のダメージが大きな血管にも続くと

え → 壊疽
の → 脳梗塞
き → 虚血性心疾患

「えのき」へと繋がる。

N美

しめじに・・えのき・・・

ダビデ

よく糖尿病は「失明に繋がる」というだろう?

これは眼球内の細小血管に高血糖による影響が及ぶことで網膜剥離に繋がるからだ。

そして血液は酸素も運ぶ。

酸素が行き届かなければ細胞は死ぬ。

「糖尿病で足先から腐る」と言われるのはこういうことだ。

N美

あ・・・あ・・・・

M彦

はわわわわ・・・

ロミペン

「なめこ」は無いのか、残念!

M彦

ロミペン、お前!

冗談言ってる場合かよおぉ!?

ダビデ

食事をして血糖値が上がる。

ただし、大量の糖を血液中に長く留めておくことは糖化を促進してしまうためよくない。

糖もエネルギー、つまり「お金」だ。


「必要以上の使わないお金を裸で持ち歩いてはいけない」


財布(グリコーゲン)か銀行口座(脂肪細胞)に預けて「使う分だけ引き出す」ことが大事なんだ。

M彦

あ・・・・

N美

つまり高血糖は糖化を促進し「血管の病」を引き起こすんですね・・・

知らなかった・・・。

ダビデ

その通り。


糖尿病とは、ひらたくいうと「血糖値が下がらなくなる病気」


そして血糖値が高い状態でいると血管に障害をもたらす。


つまり糖尿病から派生する「しめじやえのき」と言った合併症というのは「血管の病気」なんだ。


そして糖化によって発生するAGEsによる悪影響は血管だけにとどまらず、肌や脳の機能低下や老化をも促進させる。

N美

だから「必要とする以上に血糖値を高めてはいけない」

ダビデ

そのとおり。

ただし、先程も言ったがグルコースは我々の肉体には「必要」なんだ。

脳や赤血球なども大量のグルコースを消費する。

そしてグルコースは細胞一つ一つのエネルギーとなるだけではなく、今後君らが学ぶ様々な「代謝の材料」にもなる。


だから「余分な糖」は「もし枯渇した際に使えるように」身体が溜め込むわけだ。

グリコーゲンや脂肪という形でね。

N美

余分な糖をため込む・・・

それで血糖値を下げるホルモン・・・インスリンか・・・

ダビデ

ちなみに我々の肉体にはインスリンとは逆に「血糖値を上げる作用をもつホルモン」も「多数」存在する。

N美

え・・・血糖値を上げるホルモンですか?

それってマズイのでは・・・

ダビデ

それについてはまた改めて説明しよう。

ここで1つ覚えて欲しいのは

「血糖値を上げる作用を持つホルモンは多数存在するが」

「血糖値を下げる作用を持つホルモンはインスリンのみ」ということだ。

M彦

唯一なんですか!?

そ、それじゃあ・・・

N美

めちゃくちゃ大事なホルモンじゃないですか・・・

ダビデ

そうだね。

高血糖状態がいかに危険なのか少しは分かってくれただろう?

そしてインスリンは高血糖を防いでくれる唯一のホルモン。

まさに大切なんだ。

アーシャ

ちなみにそのインスリンは「すい臓」という臓器内に分布している「ランゲルハンス島β細胞」というところから分泌されるわよ♪

N美

ランゲルハンス島・・・聞いたことがあります。

ダビデ

そしてそのβ細胞自体が壊れてしまっているのが1型糖尿病だ。

インスリンの「分泌そのもの」に問題がある。

N美

そういえば・・・・

食後にインスリン注射を打っている同級生が学生時代に一人いました・・・

ダビデ

自己免疫が自身のβ細胞自体を壊してしまうんだ。

N美

インスリンは唯一の血糖値を下げるホルモン・・・

1型糖尿病は「インスリン分泌そのもの」に問題がある。

じゃあ病院で糖尿病予備軍と言われたデブ彦の場合は・・・

ダビデ

それについてはまた改めて説明しよう。
(デブ彦・・・)

M彦

先生・・・そういえばインスリンのことを

「血糖値を下げるホルモンというだけの認識ではまったく足りない」

と仰っていましたよね?

ダビデ

よく覚えていたね。

N美

えっ!?

インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモン!

それだけではないのですか?

ダビデ

「インスリンは血糖値を下げるホルモン」


肉体彫刻家として、その理解ではダメだ。


インスリンは「究極の同化ホルモン」

そして「裸でお金は持つな」


これが次回のキーワードだ。

「血糖値を上げ過ぎてはいけない」

食後に血糖値測定をするわけでもないから「何をどうすれば適切」なのかわかりません。

「脂質を取り過ぎてはいけません」

なぜダメなのか、そしてどの程度なら良いのか、その「正解」がわかりません。

「カロリーを取り過ぎてはいけません」

外食もする。自炊をしても毎食のカロリーなんて計測する人はほぼいない、自分の適切なカロリーなんてよくわからない。

「してはいけません」と「縛り」は課すが、その理由や縛りを守る方法は良くわかりません。

「インスリンとは血糖値を下げるホルモンです」

馬鹿を言っちゃいけない。インスリンの機能は血糖を下げるだけにとどまらない。

勉強嫌いの子供に「勉強しなさい」と伝えるように、ただ「ダメ」だ「よくない」と正論のように聞かされ続ける。

そして偏った知識のみがインプットされる。

その結果、身体に必要な物も「悪者」になる。

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